コラム
環境社会貢献

家庭でできる脱炭素。数字で見るCO2削減効果

「環境にやさしい」と言われても、どのくらい効くのかが分からなければ判断はできません。この記事では、家庭の太陽光発電がCO2削減にどれだけ寄与するのかを、できるだけ具体的な数字で見ていきます。

家庭のCO2は、どこから出ているか

家庭から出るCO2の多くは、電気の使用に由来します。次いで、給湯や暖房に使うガス・灯油、そして自動車のガソリンです。

電気は「使う場所」では何も出しませんが、発電所で燃料を燃やしています。つまり、買う電気を減らすことが、そのまま排出を減らすことになります。

5kWの太陽光で、どれだけ減るか

計算に必要なのは2つの数字だけです。年間の発電量と、電気1kWhあたりのCO2排出係数です。

年間のCO2削減量
削減量 = 年間発電量(kWh)× CO2排出係数(kg-CO2/kWh)
5kWのシステムで、1kWあたり年間1,100kWh発電する場合。排出係数を 0.44kg-CO2/kWh として計算します。
5kW × 1,100kWh = 5,500kWh
5,500kWh × 0.44kg = およそ 2,420kg-CO2
年間およそ 2.4トンのCO2を削減する計算になります。

その量を、身近なものに換算すると

2.4トンと言われてもピンとこないので、いくつかの尺度に置き換えてみます。

杉の木の吸収量に換算杉1本(50年生)が1年に吸収するCO2をおよそ14kgとすると、およそ170本分にあたります
ガソリン車の走行に換算1リットルの燃焼でおよそ2.3kgのCO2が出るとして、およそ1,000リットル分。燃費10km/Lならおよそ1万kmの走行に相当します
20年間で見ると設備を20年使い続けた場合、単純計算でおよそ48トンになります

1軒の屋根でできることは、地球規模で見れば小さな数字です。ただ、170本の木を植えて20年育てるのと同じことを、屋根の上で静かにやっている——そう考えると、意味の見え方は変わってきます。

電化と組み合わせる

削減効果をさらに伸ばしたいなら、次の一手は電化です。

給湯や調理をガスから電気に切り替えると、そのエネルギーを自宅の発電でまかなえるようになります。ガスを燃やしていた分がそのまま減るため、家全体の排出量は大きく下がります。自動車を電気自動車に替えれば、走行に使うエネルギーまで屋根でつくれます。

順番としては、まず太陽光で「つくる」体制をつくり、そのうえで使うエネルギーを電気に寄せていく。この流れが、家庭でできる脱炭素として効率のよい進め方のひとつです。

  • 太陽光発電:買う電気を減らす
  • 蓄電池:つくった電気を夜も使い、自家消費率を上げる
  • オール電化・V2H:ガスとガソリンの分を電気に寄せる

つくるときのCO2は、どれくらいで取り返せるか

「パネルを製造するときにもCO2が出ているのでは」という疑問はもっともです。実際、シリコンの精製やパネルの製造にはエネルギーを使います。

この点を測る指標がエネルギーペイバックタイム(EPT)です。製造・輸送・設置・廃棄に投入したエネルギーを、発電で何年かけて回収できるかを示します。

住宅用の太陽光発電では、おおむね1〜2年程度とされています。20年以上使う設備ですから、残りの十数年ぶんは正味の削減になる計算です。

20年後、パネルはどうなるのか

正直に書いておきたい論点です。太陽光パネルには寿命があり、いずれ廃棄の時期がきます。

2010年代に大量に設置された設備が寿命を迎える時期には、廃棄されるパネルの量が大きく増えると見込まれています。ガラス・アルミ・シリコン・銀などを含むため、適切に処理すれば資源として回収できますが、そのための体制づくりは現在進行形の課題です。

事業用の設備については、廃棄費用をあらかじめ積み立てる制度が設けられています。住宅用は制度の対象外ですが、いずれ処分費用がかかることは、導入時に知っておくべきです。

環境のために導入する設備が、最後に環境負荷を残しては本末転倒です。この点を伏せずに説明することも、私たちの仕事だと考えています。

屋根の外でできること

太陽光は効果の大きい一手ですが、それだけではありません。日々の選択の積み重ねも、同じ方向を向いています。

  • 冷暖房の設定を1度見直す。使用量の大きい用途ほど、小さな調整が効きます。
  • 買い替えのときに高効率機を選ぶ。冷蔵庫やエアコンは、10年前の機種と比べて消費電力が大きく下がっています。
  • 断熱を改善する。窓まわりを変えるだけで、冷暖房の負荷は目に見えて減ります。
  • 電気の使う時間帯を昼に寄せる。太陽光があるなら、洗濯や食洗機を昼に回すだけで自家消費率が上がります。

最後の項目は、設備を入れたあとに誰でもできて、効果がはっきり出る工夫です。発電している時間に使う——これだけで、買う電気は確実に減ります。

パネルの製造で出るCO2のほうが多いのでは?
エネルギーペイバックタイムはおおむね1〜2年とされており、20年以上使う設備であれば、差し引きで大きく削減側に振れます。ただし前提条件によって数値は変わるため、出典を確認したうえで判断してください。
廃棄するときの費用はどのくらいですか?
設備の規模・立地・処分方法によって変わります。導入時に概算を確認し、長期の収支に含めておくことをおすすめします。
CO2削減量は、何かの証明になりますか?
ご家庭の場合、対外的な証明として使う場面は多くありません。法人では、排出量の算定や開示の材料として用いられます。
わが家の削減量を試算します

屋根の条件から年間発電量を算出し、CO2削減量と電気代の削減額をあわせてご提示します。

まとめ

家庭の太陽光発電による削減量は、5kWの設備でおよそ年間2.4トン。杉の木にしておよそ170本分です。

環境への配慮を企業任せにするのではなく、一人ひとりが主体的に取り組むことで、この数字が積み上がっていきます。屋根という、これまで何も生み出していなかった場所が、そのまま削減の場所に変わる——太陽光発電の面白さは、そこにあります。

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